とくり書店では、職場体験を通じて学んでほしいことが三つあります。
一つは「働くことの大変さと尊さ」です。
インターネットの発達や科学技術の進歩により、現代社会には様々な仕事が増えています。
また、そういった仕事の一部は派手な露出をしているため、どうしても傍から見ると簡単にお金を儲けているような人ばかりがいるような錯覚を子どもたちに与えてしまいがちです。
しかし、額に汗してという感覚は一昔前のものではなく、今社会を動かしている根底に流れる大切なものではないでしょうか。
書店の売上は本一冊に換算すると、とても少額です。
それを実際に目の前にすることで、お金に対する見方、働くということへの見方が変わるのではないでしょうか。
自分たちが日頃普通に食べているご飯、衣服、当たり前に読んでいる教科書や本、そしておこずかい…。
そのお金を稼ぐことがどれだけ大変なのか、自分たちの親がどんな想いで働いているのか、という事をちょっぴりでも感じ取ることができたら、そんなふうに私達は思っています。
もう一つは「勉強の大切さ」です。
例えば本屋さんでは様々な書籍を取り扱うため、様々な一般常識・社会常識が必要になってきます。
今の首相が誰なのか、ドヴォルザークが何者なのか、鹿児島の出身の小説家で誰がいるか、そしてわからないことがあればどうやって調べるか?
こういった知識は書店の業務だけでなく、社会人に必要な知識です。
今、学校で「自分には関係ないや」と思っているような授業、読まずにスルーしている課題図書、先生が話してくれる今の社会情勢…。
それらは全て未来の自分を作る要素、そんな事を伝えることができればと思います。
そして最後は「人と繋がることの大切さ」。
営業や商品の配達で沢山の人と触れ合ったり、本の流通を肌で感じてもらうことで、自分たちが読んでいる本が手に届くまで、ほんとうに沢山の人が関わっていることを実感してもらっています。
自分たちの生活が、目に見えない沢山の人々につながり支えられていること、これを意識することで人との接し方が変わってきます。
私は毎回、生徒さん達にこんな話をします。
「成人式に再会した時に相手が喜んでくれるかそうでないか、それは今の君たちが友達とどう接しているかにかかっているんだよ」
地域に支えられているとくり書店だからこそ、一歩踏み出して自分の行動を変える、その大切さを地域の子供達に伝えていきたいと思っています。
職場体験は受け入れる側も準備などで大変な面はあります。
しかし、地域の子供達に伝えるべき大切なことを伝える場として、できる限り職場体験を続けることができればと思っています。